オフィスに来れない方へ オンライン法律相談実施中

INFORMATION

高次脳機能障害④

高次脳機能障害とは、交通事故により頭部に強い衝撃をうけて脳の一部が損傷し、機能が低下した場合に発生する障害をいいます。頭部外傷により、意識障害を負った被害者のかたが、意識の回復後、認知障害や人格変化などが発生し、社会復帰が困難となることがあります。

この点、将来介護費については、過去には常時介護が必要とされるような後遺障害等級1級ないし2級の等級が得られた場合に認められていました。

ただ、高次脳機能障害は、身体的な機能については特段に支障はなく、身体的な介護をする必要はないものの、高次脳機能障害により人格変化が生じているため、日常生活の上でも見守り、声掛けをする必要があるとして、上記の等級を満たさない場合でも、将来の付添看護費が認められることが多くなっています。

本日は、高次脳機能障害の後遺障害が発生した事案について、近時の裁判例(仙台地判平成28年9月29日判決)をご紹介します。

この裁判例は、43歳男性が自動二輪車で運転中、交差点で自動車と出会いがしらで衝突した事故について発生した事故(右下腿骨骨幹部骨折、右リスフラン関節開放性脱臼骨折、びまん性軸索損傷、頭部挫傷等の傷害)について、高次脳機能障害につき自賠責5級2号、右拇指MP関節機能障害について自賠責12級12号の、併合4級が認定された事例です。

保険会社側は、高次脳機能障害の画像所見や各種テストの結果から7級「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」又は9級「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」のレベルに相当する、また被害者が比較的若い年齢で、症状がさらに改善している可能性があるなど、と反論しました。

裁判所は、被害者について、一時的に易怒性が軽減したり、本人や周囲の努力によって稼働を継続していることがあったとしても、後遺障害の程度が改善されているとまで認めるに足りる証拠はなく、現在においても易怒性と物忘れが顕著であることが認められること、他にも反応が鈍く動作が遅い、言葉が出てこなくうまく話せないとされ、顧客とのトラブルがあったり、作業に時間がかかる、顧客の問い合わせに答えられないなどの支障が生じ、収入もかなり減少していること、などを根拠に、高次脳機能障害については、自賠責保険の後遺障害等級認定通り5級2号に該当すると判断しました。

また右リスフラン関節開放性脱臼骨折後の右拇指MP関節機能障害については12級12号が認められ、被害者の後遺障害は自賠責の等級認定とおり併合4級相当とされ、92%の労働能力喪失率が認められました。

なお、保険会社側からの高次脳機能障害は徐々に改善傾向にある旨の反論に対しては、症状固定後も症状に大きな変化は見られないことなどから、症状が改善する可能性があるとは言えないとしました。

そして、介護費については、入院付添費日額6500円、自宅付添費日額4000円として認めるとともに、将来介護費については、妻による介護が必要であることは認められるものの、日常生活動作は一応自立していること、労働能力に大幅な制限があるものの妻の援助を得て稼もしていること、必要とされている介護の具体的な内容は、起床時の声掛け、服薬管理、出かける際の持ち物の確認、通院付き添い、運転時の道案内などであることからすれば、常時介護が必要な状態であるとまでいえず、随時の看視ないし声掛けが必要な程度であるなどとして、1日あたり2000円の介護費用を症状固定時の原告の平均余命である37年間認めることが相当であるとして、37年間につき日額2000円で将来介護費を認定しました。

本判決は、後遺障害等級については併合4級(高次脳障害については5級)ですが、高次脳機能障害による後遺障害により、随時の看視や声掛けが必要であるとして、将来看護費が認められている点が注目されます。

この記事を書いた人

弁護士法人TRUTH&TRUST

弁護士法人TRUTH&TRUST

全国対応!オンライン法律相談実施中!