治療費、入院費などは、実際に支払う必要のある実費全額が認められますが、その必要性と相当性について裁判で争われることがあります。
このような場合として、医師の医療行為以外の費用としてよく争いとなる、接骨院、鍼灸、マッサージ、カイロプラクテック等の費用について、お話をします。
接骨院、鍼灸、マッサージ等の費用は、原則として医師の指示をうけることが必要です。
また施術の必要性・有効性、施術内容の合理性、施術期間の相当性及び施術費用の相当性等の要件を満たす必要があります。
ただし、裁判例のなかには、医師の指示がなくとも、治療効果が上がっていることを認定した上で、賠償を認めるものもあります。
この点について指摘した判例としては、東京地判平16.6.27日判決があり、これは31歳男性会社員の頚椎捻挫、右膝外側側副靱帯損傷等の傷害に対する接骨院での施術につき、東洋医学に基づく施術費については、原則として医師の指示を受けることが必要であるが、施術を受けることにより残存していた疼痛が軽快し、快方に向かいつつあることが窺えること、施術を受けることにより整形外科への治療回数が減少していること、施術費が社会一般の水準と比較して妥当と判断できること、加害者側が接骨院における施術を認めていた経緯があること等から、症状固定日までの施術を損害として認めました。
また、カイロプラクテックの費用について、大阪地判平成6年9月29日は、17歳男子電気工の後遺障害(第5頚髄節以下の完全麻痺等、1級)の事例において、医師の勧めによるものであること、腕の運動障害や知覚障害を改善する効果があったとして、カイロプラクテックの費用を認めました。
上記のように、鍼灸やマッサージの費用等は、医師の指示がなくとも治療効果が上がっていることを認定した上で、賠償を認めるものもありますが、そのような場合でも、全額ではなく一部の金額に減額されることがよくあるので注意が必要です。
また、訴訟においては、マッサージ等の治療が、治療効果があったことをカルテ等の記載から立証していく必要があります。