交通事故の賠償額の算定にあたっては、被害者側に生じた損害の金額を、一定割合減額して賠償額を決める場合があります。
このうち、被害者の過失が事故の発生や損害額の増額に寄与した場合、一定の割合で減額を行うものがあります。これを「過失相殺」といいます。
ところで、「過失相殺」における過失とは、被害者本人の過失だけではなく、被害者と特別の関係にあるものの過失も含まれると考えています。すなわち、被害者と「身分上または生活関係上一体をなすとみられるような関係にあるもの」いわゆる「被害者側の過失」がある場合も過失相殺が認められます。
判例では、夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を負った妻が第三者に対し損害賠償する場合の損害額を算定するについては、夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなどの特段の事情がない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とするなどと判示しています(最高裁昭和51年3月25日)。
被害者自身に過失がなくとも、損害発生につき被害者と密接な関係があるもの、つまり夫婦のような生計を同一するものの過失も「被害者側の過失」として過失相殺を認めています。
以上により、一定の場合には、被害者本人に過失がなくとも、「被害者側の過失」が認められるとして、過失相殺により減額が認められる可能性がありますので注意が必要です。