民法においては、被害者が交通事故などで死亡した場合、被害者の近親者(例えば被害者の父母、配偶者、子)には固有の慰謝料請求権が認められるとされています(民法711条)。
他方で、被害者に重大な後遺障害が残った場合については、死亡事案と異なり、民法上規定がないため、慰謝料が認められるかが問題となります。
そこで被害者に後遺障害は残存した場合にも、近親者の固有の慰謝料請求が認められるのでしょうか。
判例は、10歳の女子の顔面に、医療では除去できない醜状が残った事例において、「子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をうけたと認められる」場合、近親者固有の慰謝料を請求できると判断しています(最高裁昭和33年8月5日)
従って、被害者に重度の後遺障害が残存した場合は、被害者本人とは別に、被害者の近親者にも固有の慰謝料請求権が認められる可能性があります。
但し、どのような場合が「子が死亡したときにも比肩しうべき」状況と言えるかが問題となりますが、この判例は女の子の顔面に将来も残存する醜状が残ってしまったことがポイントです。
必ずしも重度の後遺障害が残存した場合に全て認められるという訳ではないので、限定的に考える必要があると思われます。