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高次脳機能障害⑨

高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、交通事故により頭部に強い衝撃をうけて脳の一部が損傷し、機能が低下した場合に発生する後遺障害をいいます。

高次脳機能障害は、身体的な機能については特段に支障はなく、身体的な介護をする必要はないものの、高次脳機能障害により人格変化が生じているため、日常生活の上でも見守り、声掛けをする必要があるとして、将来の付添看護費が認められることが多いです。

そしてこの場合の将来介護費については、介護をする近親者の就労可能年限(67歳)までは親族介護を前提とする金額(8000円~9000円)とし、それ以降は職業的介護者による場合を想定して金額の算定をされることが多いです。

本日は、交通事故により高次脳機能障害の後遺障害が発生した事案についての将来介護費の算定について、近時の裁判例(さいたま地裁平成31年3月19日判決)をご紹介します。

この裁判例は、63歳男子会社員が店舗敷地内のマンホールの蓋を開けて作業中、敷地内に侵入してきた車両に頭部を轢過された事案(外傷性くも膜下出血、頭蓋骨開放性陥没骨折、脳挫傷高次脳機能障害、自賠責2級1号)です。

この事案では、男性の将来介護費について、日常生活の状況において、食事動作はときどき介助等を要し、排せつ動作はほとんどすることはできず、入浴や歩行、階段昇降は不能であり、車椅子操作はときどき介助等を要するものであったとし、こうした日常生活動作の状況は、現在においてもほとんど変化はなく、同居する妻や子が適宜に分担しつつ、週に3日の通所によるデイケアサービスを利用しながら介護等に当たっていること、男性には易怒性はみられず、情動性では安定しており、特段の問題行動はないことが認められるが、その日常生活動作の観点からみる限りは、随時の介護で足りるものの、現実には、常時に近い適宜の見守りが必要とすることができるとして妻67歳となるまでの7年間は、妻及び子による近親者介護として日額8000円とするのが相当であるとされました。

そしてそれ以降の男性の平均余命となる12年間については、職業付添人による介護を想定し、また男性の情動面が安定しているのは、近親者である妻及び子がその介護に当たっていることによるところが多いと考えられ、今後、職業付添人がこれに当たる場合、現在のような情緒面の安定が保たれるとは限らないことも考慮して、その費用を日額1万8000円と将来介護費を認定しました。

なお、慰謝料の算定については、症状の重篤さや手術を繰り返したことも踏まえれば、傷害慰謝料について400万円と認めることとし、後遺障害慰謝料については、男性の左頭部の頭蓋骨が大きく欠損したままとなっていること、その外貌に相当な醜状が残存していることを踏まえれば、後遺障害慰謝料は2500万円とするのが相当であると判示され、高額な慰謝料が認定されました。

本件は、介護を行う近親者の就労可能年限(67歳)以降平均余命までの年月は職業付添人による介護を想定するとともに、男性の情動面が安定しているのは近親者である妻及び子がその介護に当たっていること、職業付添人が介護を行う場合、現在のような情緒面の安定が保たれるとは限らないことも考慮して、介護費用を算定している点が注目されます。

この記事を書いた人

弁護士法人TRUTH&TRUST

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