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遷延(せんえん)性意識障害②

遷延(せんえん)性意識障害とは、主に交通事故などを原因とする頭部外傷等によって昏睡状態に陥り、開眼できるようになったものの、意思疎通が完全に喪失した身体状態となってしまった場合の後遺障害をいいます。

交通事故により遷延性意識障害後遺障害が発生してしまった被害者については、介護を行う近親者の負担が極めて重くなることが多く、将来介護費等について手厚い保証がなされるべきであり、そのために我々も努力を行っています。

本日は、遷延性意識障害後遺障害が発生した事案について、近時の裁判例(札幌地判平成28年3月30日判決)をご紹介します。

この裁判例は、30歳公務員の被害者が信号交差点内を歩行横断中、普通貨物車に衝突された事故についての後遺障害(遷延性意識障害)について、自賠責1級1号が認定された事例です。

この判決は、将来医療費について、被害者は症状固定時から引き続き平均余命と同様の46年の余命期間にわたり入院する必要があり、本件事故による損害として、上記期間中、1年当たり840万円の医療費が生ずることになったと認めるのが相当であること、また被害者は平成28年1月まで国民健康保険法に基づく保険給付及び重度心身障害者医療費助成条例に基づく助成を受け、入院に基づく医療費を支払っていないが、その後は、同様の保険給付等の存続が確実であるということはできないから、損害から控除すべき保険給付等は、当初の3年のものであるとして、43年間につき年額840万円で将来医療費を認めました。

そして、将来介護費について、症状固定時から引き続き46年の余命期間にわたって入院する必要があり、母が症状固定後も毎日被害者に付添い、体位交換、痰吸引、おむつ交換等をしているものであり、本件事故による損害として、上記期間中1年当たり219万円の介護費用が生ずることになったものと認めるのが相当であるとして、46年間につき年額219万円で将来介護費を認定しました。

さらに、逸失利益の算定については、平成20年の年収額が362万3626円であったことや、賃金センサス平成24年学歴計男子労働者の30~34歳の平均賃金額が460万0400円であること等から、センサス男子労働者年齢平均の8割を基礎収入として、67歳までの33年間100%の労働能力喪失を認定しました。

本判決は、将来医療費の算定について、国民健康保険法に基づく保険給付や地方公共団体における重度心身障害者医療費助成条例により、現時点で入院に伴う医療費を支払っていないにも関わらず、その後は同様の保険給付の存続が確実でないとして、高額の将来医療費の支払を認めた点が注目されます。

詳しくは弁護士にご相談下さい。

この記事を書いた人

弁護士法人TRUTH&TRUST

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